第2回

「本当にいいんですか? では、私の住所は○○です。よろしくお願いします」
「じゃ着いたら、これこれの金額の紙幣を封筒で送り返してくださいね」

海外通販をよく利用する私は、普段から海外に物を送るのには慣れていた。アメリカの通販ショップはしょっちゅう商品を間違える。その度に返品処理させられるので、本をどのくらい送ったら、いくらかかり、どのくらいで着くかなど、結構鍛えられていたからだ。
それからしばらくして、別のアメリカ人学生から、
「メーリングリストで見たんですが、私が長年集めていた日本の漫画(明細にはあの名作『風と木の詩』も含まれていた)を先日、実家の母がごっそり捨ててしまったんです(泣き顔マーク<−やおいを読むアメリカ人は日本のEメールのフェイスマークを多用する)。この機会に買い直したいと思いますので、頼んでもよろしいですか?」
というメールが来た。

私の友人も母親に『風木』を捨てられた経験があり、とても他人事には思えなかった私は、快くOKした。手数料は一切もらわない。その代わり送る前に読んでいいということでこの商談は成立した。

<アメリカ人は悲劇ものに弱い>

この女性は本当に大量に買った。99年6月から始まって12月時点ですでに1300冊以上、購入している。どんな商品を注文してきたかというと、

●石原理、鳥人ヒロミなど、ビブロスの絶版もの(ビブロスはすぐに絶版にしてしまい手に入らなくなってしまうことが結構あるのだ)、及び、出たばかりのもの(日本の古本屋で買ったほうが安い)。
●『Banana Fish』などの全巻物で1巻目だけとりあえず読んだものの2巻以降すべて。萩尾望都、竹宮恵子など有名作家ものを大量に(いわゆる作家買い)。
●『ファイブスター物語』『魍魎戦記摩陀羅全集』などの青年向けファンタジー。
●漫画版の『炎のミラージュ』『陰陽師』(安倍晴明はアメリカでも人気者だ)など女性向けオカルト?もの。
●冬水社(旧吉祥寺企画のもの。当然、東宮千子ものはすべて)、ヒット出版、一水社、などアメリカでは手に入りにくいマイナー出版社や倒産してしまった出版社(ひかり出版・スコラなど)のもの。
●出たばかりの新刊(少しでも早く読みたいため、定価でもよい)

などなどだ。

どうやら、やおい以外にもファンタジー、オカルト系(調伏、転生という言葉がやたらと出るやつですな)もアメリカ人は得意なようだ(私は不得意なので読まずにただ送っている)。

感動すると感想メールを送ってくるのだが、やおいものに多い、「悲恋もの」(愛し合う2人の男が結ばれずに最後は死ぬ)のコミックスを送ると、大抵、すさまじい絶叫メールが来る。

「アッシュ〜なぜ、死んでしまったのぉ!!!!」
「誰か嘘だと言って! すばるが、あんなバカな車に轢かれて死んでしまうなんて!」
「厩戸、かわいそすぎるぅ。これって史実?(なわけないだろって)」
「摩利!!辛すぎる。死ななきゃいっしょになれないなんて〜」

『BananaFish』、『日出処の天子』などは複数のアメリカ人に送ったが、全員が全員、『火垂るの墓』を見た直後のような、怒りに近い(咳込むような)号泣メールを送ってきた

「フランダースの犬」でさえ、ラストをハッピーエンドにして公開したアメリカだけに、アメリカ人女性の多くは、やおい「悲恋もの」にはまるで免疫が無いらしい。
(次号へ続く)

[文:スラッシュ君 991208]

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